ビジネスを円滑に進めるための運転資金確保に向けて、資金繰りを考えている方も多いでしょう。
一般的な資金調達手段として「融資」がありますが、融資を受けるには保証人や担保物件が求められることが多く、フリーランスにはハードルが高い場合があります。
資産を持たないフリーランスでも資金繰りを改善できる方法として「売掛金担保ローン」が挙げられます。
本記事では、売掛金担保ローンの仕組みや利点、フリーランスの方が利用する際のポイントを詳しく解説します。
売掛金担保ローンとは何か
在庫や売掛金を担保として資金を借り入れる方法が「売掛金担保ローン」です。
一般的に融資というと、土地や建物などの不動産や事業用資産を担保にするイメージがありますが、資産を持たないフリーランスでも在庫や売掛金を活用して資金繰りを行うことができます。
不動産担保ローンやファクタリングとの違い
先述のように、売掛金担保ローンでは在庫や売掛金を担保として資金を借ります。
一方で、不動産担保ローンでは、土地や建物などの不動産を担保に融資を受けます。
もし返済が滞った場合、債権者はその不動産を処分する権利を持つことになります。
不動産の価値は固定資産税評価額や路線価などから推定できるため、資金調達の手段として利用しやすい面があります。
一方で、ファクタリングは売掛金を売却することで資金を得る方法です。
売掛金担保ローンと混同されることがありますが、ファクタリングは売掛金を譲渡する取引であり、融資とは異なる制度です。
フリーランスでも利用しやすい理由
売掛金担保ローンの特徴は、フリーランスでも利用しやすい点にあります。
不動産担保ローンは価値のある土地や建物を所有していることが前提ですが、フリーランスが不動産を持っていない場合、利用が難しいことがあります。
売掛金担保ローンは売掛金があれば利用できるため、不動産を所有していない、あるいは開業間もないフリーランスでも活用できます。
売掛金担保ローンを活用する利点
ここからは、売掛金担保ローンを利用する5つのメリットをご紹介します。
フリーランスでも迅速な資金調達ができる
前述のように、売掛金担保ローンは法人だけでなくフリーランスも利用しやすく、迅速な資金繰りが可能です。
通常の融資では、金融機関に対して不動産や設備、連帯保証人などの担保が求められることが多いです。
これらの担保を用意するのはフリーランスにとって難しく、融資が受けられない場合もあります。
売掛金担保ローンは、手持ちの在庫や売掛金を担保とするため、多くの法人やフリーランスが利用できます。
さらに、融資額の算定時に、製造技術や管理能力が評価され、融資額が増加する場合もあります。
したがって、大きな資産がなくてもフリーランスが資金繰りをしやすくなります。
経営状況の改善が期待できる
過度な在庫を持っていたり、売掛金の回収が遅延していると、資金繰りが困難になります。
余剰の在庫や売掛金を担保として資金化することで、経営状況の改善が見込めます。
金融機関との関係構築が可能
売掛金担保ローンを利用すると、金融機関に対して定期的な経営報告が必要となります。
金融機関は経営状況を把握し、経営面での助言を提供できます。フリーランスにとっても、金融の専門家からアドバイスを受けられるため、双方に利点があります。
金融機関との良好な関係を築くことで、将来的な設備投資の際にも融資を受けやすくなる点も魅力です。
赤字でも資金調達が可能な場合がある
金融機関は貸し倒れリスクを懸念するため、通常は赤字の企業への審査は厳しくなります。
しかし、売掛金担保ローンでは、万が一返済不能になっても在庫や売掛金を資金化できるため、赤字や債務超過でも融資を検討してもらえる可能性が高まります。
長期的な活用が可能な場合も
売掛金担保ローンは長期間の利用も視野に入れられます。
一定の在庫を維持していれば、その一部を販売しても支障はなく、売掛先との取引が継続していれば一部を資金化しても問題ありません。
売掛金担保ローンが適している事業者とは
ここまで売掛金担保ローンについて解説しましたが、どのような事業者が利用に適しているのでしょうか。
多くの取引先を持つ事業者
複数の取引先があるということは、担保となる売掛金が分散していることを意味します。
そのため、仮に一社が支払い不能になっても、他の売掛金でカバーでき、リスクを抑えつつ資金調達が可能です。
このような理由で、取引先の多さは審査において有利に働き、特に大企業との取引があれば審査通過の可能性が高まります。
中小規模の企業やフリーランス
冒頭で述べたように、通常の融資では不動産などを担保にすることが一般的です。
したがって、不動産などの資産を持たない中小企業やフリーランスは、不動産担保ローンを利用できません。
仮に不動産を所有していても、その価値が低ければ希望する融資額を得られないこともあります。
売掛金担保ローンは、売掛先がある事業者であれば誰でも利用でき、希望する融資額を得られる可能性があります。
ファクタリングとの比較検討
売掛金を活用して資金調達を行う点で、売掛金担保ローンとファクタリングは混同されがちです。
しかし、その仕組みや会計処理など、多くの面で違いがあります。
仕組みの違い
ファクタリングは、売掛金を売却することで資金を調達する方法です。
売掛金を売却すると、その債権はファクタリング会社に移転するため、「債権譲渡」となります。
一方、売掛金担保ローンは売掛金を担保とする「融資」であり、債権は移転しません。
負債となるかどうか
ファクタリングは売掛金を売却するため、融資とは異なる取引です。
したがって、会計上は負債ではなく、「債権譲渡」または「売買」として処理されます。
一方、売掛金担保ローンは「融資契約」であるため、会計上は負債となります。
審査基準の違い
ファクタリングの審査は、利用者ではなく売掛先の信用力が重視されるため、創業間もない企業や赤字企業でも審査に通りやすいです。
一方、売掛金担保ローンでは、利用者自身の返済能力が重要視されます。
そのため、審査の難易度は一般的な融資と同程度であると考えておくべきです。
調達可能金額の違い
ファクタリングでは、売掛金額から手数料を引いた金額しか資金調達できません。
一方、売掛金担保ローンでは、利用者の信用力次第で、担保の売掛金額以上の融資を受けられる可能性があります。
この信用力とは、製品の品質や管理体制の優秀さなど、数値化しにくい要素が評価されることがあります。
まとめ
売掛金を担保として資金を借り入れる「売掛金担保ローン」は、フリーランスでも利用できます。
ファクタリングとは仕組みや審査基準が異なるため、どちらが自分に適しているか検討する際には、本記事を参考にしてみてください。
