ファクタリングには、「二社間取引」と「三社間取引」の2つの方式が存在します。
それぞれの特徴を理解し、自社に最適な手段を選ぶことが重要です。
この記事では、二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの特性と相違点について解説します。
さらに、二社間ファクタリングの利点や欠点、そしてその活用が適している状況についてもまとめましたので、ぜひご参照ください。
迅速な資金調達が可能!二社間ファクタリングとは
二社間ファクタリングとは、”サービス利用企業”と”ファクタリング会社”の間で契約を行うファクタリング手法を指します。
取引先の同意を得る必要がないため、ファクタリングの利用を知られるリスクがないのが特徴です。
さらに、取引先を介さずに済むため、迅速な資金化が実現します。
二社間ファクタリングは違法ではない
債権譲渡登記制度が導入されるまでは、ファクタリングを利用する際に、取引先の承諾や通知以外で第三者への対抗要件(※1)を備えるのが難しく、「二社間ファクタリングはリスクが高い」とされていました。
しかし、1998年に債権譲渡登記制度が施行され、第三者対抗要件を得ることが可能になりました。
これにより、二社間ファクタリングの利用が容易になったものの、この制度を知らない方は「違法ではないか」と不安に感じるかもしれません。
結論として、二社間ファクタリングは国が中小企業の資金繰りの手段として推奨しており、違法ではありません。
ただし、債権譲渡登記の証明書発行には費用が発生するため、それを口実に高額な手数料を要求する悪質な業者も存在します。
したがって、どのファクタリング会社でも良いわけではなく、信頼性の高い業者を選ぶことが重要です。
※1 債務者や第三者に対して、債権譲渡の事実を主張するための法的要件
主な違いは?二社間ファクタリングと三社間ファクタリングの比較
ファクタリングには、「三社間ファクタリング」という方法も存在します。
二社間ファクタリングとの違いを事前に理解しておきましょう。
三社間ファクタリングとは何か
三社間ファクタリングとは、「サービス利用企業」「ファクタリング会社」「取引先」の三者で契約を結ぶファクタリング方式です。
取引先との契約も必要となるため、ファクタリングを利用する際には、取引先の同意を得る必要があります。
二社間と三社間ファクタリングの違い
二社間と三社間のファクタリングの相違点には、「手数料」「審査の難易度」「取引先への通知」「売掛金回収のプロセス」などがあります。
手数料の違い
二社間ファクタリングの手数料は、一般的に「8%〜18%」が相場です。
一方、三社間ファクタリングの手数料は「2%〜9%」と、二社間に比べて低めに設定されています。
三社間ファクタリングでは、取引先とも契約を結ぶため、「二重譲渡」や「架空債権」のリスクがありません。
そのため、ファクタリング会社は未回収のリスクを軽減でき、結果として二社間よりも手数料が低く抑えられています。
審査の違い
審査の通過率は、二社間ファクタリングよりも三社間ファクタリングの方が高い傾向にあります。
それは、三社間ファクタリングでは取引先に直接その存在を確認できるためです。
ファクタリング会社は未回収リスクを減らせるため、三社間ファクタリングは審査が比較的容易なのです。
したがって、二社間ファクタリングで審査に落ちた場合でも、三社間ファクタリングなら通過する可能性があります。
取引先への通知の有無
二社間ファクタリングでは、「サービス利用企業」と「ファクタリング会社」の間で契約を行うため、通常は取引先に通知が行きません。
一方、三社間ファクタリングは取引先の同意を得て契約を結びます。
したがって、三社間ファクタリングでは取引先への通知が必須となります。
売掛金回収プロセスの違い
二社間ファクタリングでは、取引先から売掛金を受け取った後、サービス利用企業がその金額をファクタリング会社に支払います。
一方、三社間ファクタリングでは、取引先から直接ファクタリング会社に売掛金が支払われます。
迅速な資金調達が可能!二社間ファクタリングの利点
ここでは、二社間ファクタリングを利用する際のメリットをご説明します。
1.最短で即日の資金調達が可能
二社間ファクタリングは、最短でその日に資金を得ることができます。
三社間ファクタリングでは、取引先に事前説明が必要であり、さらに承諾書を取得する必要があります。
取引先の対応が遅いと、資金調達までの時間が延びてしまいます。
その点、二社間ファクタリングでは、ファクタリング会社に申し込み、必要な書類を提出すると審査が始まります。
審査が終わると、指定口座に契約金額が振り込まれるため、早ければ当日中に入金されます。
2.償還請求権が存在しない
二社間ファクタリングでは、償還請求権が適用されません。
償還請求権とは、取引先から売掛金を回収できない場合に、ファクタリングの利用者に対して費用の返還を求める権利です。
万一、取引先が倒産し売掛金が回収不能になっても、サービス利用企業がファクタリング会社に返済する義務はありません。
これにより、安心してファクタリングを利用することができます。
3.取引先にファクタリングの利用を知られない
再度述べますが、二社間ファクタリングでは、基本的に取引先にファクタリングの利用が知られることはありません。
三社間ファクタリングでは、取引先の同意を得てから契約を結びます。
そのため、取引先に「経営状況が悪いのではないか」と不安を与えてしまう可能性があります。
その結果、取引量を減らされたり、取引を打ち切られたりするリスクがあります。
さらに、その噂が他の企業に広がると、新たな取引先を失う可能性もあります。
取引先にファクタリングの利用を知られ、根拠のない噂が広まると、企業の信用が損なわれる恐れがあります。そのため、三社間ファクタリングを利用する際には、取引先に十分な説明と理解を得ることが重要です。
一方、二社間ファクタリングでは取引先に知られることが基本的にないため、こうした不安を抱かずに利用できます。
4.自社の信用力が低くても利用可能
ファクタリングでは、基本的に取引先の信用度によって売掛金の買取が判断されます。
したがって、設立間もない企業など、自社の信用力に不安があってもファクタリングを利用できます。
銀行融資が難しい場合でも、ファクタリングであれば審査に通り、資金を得られる可能性があります。
注意点を確認!二社間ファクタリングのデメリット
二社間ファクタリングを利用する前に、その欠点も把握しておきましょう。
1.手数料が比較的高め
先に述べたように、二社間ファクタリングは未回収リスクが高いため、三社間に比べて手数料が高く設定されています。
ファクタリングで実際に手にする資金は、手数料を差し引いた金額となります。
手数料が高いと受け取れる金額が減少するため、注意が必要です。
売掛金に近い金額を得るには、手数料の低いファクタリング会社を選ぶことが重要です。
2.審査がやや厳しい
二社間ファクタリングは、三社間に比べて審査が厳しいとされています。
三社間ファクタリングでは、取引先とも契約を結ぶため、「二重譲渡」や「架空債権」のリスクが低いです。
二社間ファクタリングでは、取引先に債権の確認ができないため、利用者の提出する資料を信頼するしかありません。
その結果、売掛金に関するリスクが増し、二社間ファクタリングの審査が厳しくなっています。
それでも、銀行融資の審査と比べれば、二社間ファクタリングの方が通過しやすいため、利用しやすいといえます。
3.売掛金の支払い手続きが必要
二社間ファクタリングでは、取引先から売掛金を受け取った後、その金額をファクタリング会社の指定口座に振り込む必要があります。
大きな手間ではありませんが、忙しいと忘れてしまう可能性もあります。
さらに、入金された売掛金を他の支払いに使ってしまうリスクもあるため、二社間ファクタリングを利用する際は、売掛金の管理に注意が必要です。
4.個人事業主は利用できない場合がある
個人事業主は、二社間ファクタリングを利用できないケースがあります。
これは、二社間ファクタリングでは債権譲渡登記が必要な場合があり、その対象が法人に限られるためです。
再度述べますが、二社間ファクタリングでは、ファクタリングの利用が取引先に通知されることは基本的にありません。
そのため、二重譲渡や架空債権があっても、ファクタリング会社がそれを発見しにくくなります。
このリスクを回避するために、債権譲渡登記が必要となります。
個人事業主がファクタリングを利用したい場合は、三社間ファクタリングを選ぶと良いでしょう。
三社間ファクタリングは取引先とも契約を結ぶため、債権譲渡登記が不要です。
確認しておきたい!二社間ファクタリングが適しているケース
以上のメリット・デメリットを踏まえ、二社間ファクタリングが適しているのは以下の3つのケースです。
1.取引先にファクタリングの利用を知られたくない場合
取引先にファクタリングの利用が知られると、「経営が不安定なのでは」と思われる可能性があります。
二社間ファクタリングなら、取引先に知られることなく資金調達ができるため、不安を与えたり悪い噂が広まる心配がありません。
2.取引先から承諾を得るのが困難な場合
三社間ファクタリングでは、取引先の承諾が得られなければ利用できません。
そのため、「取引先に説明しても理解が得られない」「承諾までに時間がかかる」という場合は、二社間ファクタリングが適しています。
二社間ファクタリングは取引先の承諾が不要なので、安心して利用できます。
3.早急に資金が必要な場合
三社間ファクタリングでは、取引先に説明し承諾を得るのに時間がかかります。取引先が大企業の場合、社内の関係者との調整が必要になることもあります。
その結果、資金調達に時間がかかり、資金繰りが悪化する可能性があります。
一方、二社間ファクタリングはサービス利用企業とファクタリング会社の二者で進めるため、順調に行けば即日での入金も可能です。
急ぎで資金が必要な場合は、二社間ファクタリングの利用が適しています。
悪質業者に要注意!二社間ファクタリング利用時のポイント
二社間ファクタリングを安全に利用するために、以下の点に注意しましょう。
1.悪質な業者に注意する
ファクタリング業者の中には、残念ながら悪質な業者も存在します。
悪質業者を利用すると、「高額な手数料を請求される」「本来負担しなくて良い費用を請求される」「償還請求権付きの契約を結ばされる」といった被害に遭う可能性があります。
例えば、悪質業者と償還請求権付きの契約を結ぶと、取引先が倒産し売掛金が回収できない場合、その費用をサービス利用企業が負担することになります。
このようなトラブルを避けるためにも、信頼性の高いファクタリング業者を選ぶことが重要です。安心して利用できる業者は後ほど紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
2.売掛金の支払いを確実に行えるよう準備する
二社間ファクタリングを利用する際には、売掛金の支払いを確実に行えるよう事前に準備しておくことが重要です。
ファクタリングを利用すると、ファクタリング会社から指定口座に資金が入金されます。
その後、取引先から売掛金を受け取ったら、ファクタリング会社の指定口座に振り込むのが一般的です。
ファクタリング会社からの入金と取引先からの売掛金の入金までに期間が空くと、振り込みを忘れてしまう可能性があります。
もしファクタリング会社への支払いを忘れると、信用を失い、次回以降の利用が難しくなるかもしれません。
重要な資金調達手段を失わないためにも、売掛金の支払いを確実に行えるよう計画しておきましょう。
3.過度な利用で資金繰りが悪化しないよう注意
二社間ファクタリングを利用する際には、過度な利用によって資金繰りが悪化しないよう注意が必要です。
再度申し上げますが、二社間ファクタリングは三社間に比べて手数料が高いです。
手数料分を他の利益で補填できれば問題ありませんが、二社間ファクタリングを頻繁に利用すると、資金繰りが悪化する恐れがあります。
ファクタリングを利用しなくても資金に余裕がある場合は、利用を控えるか、銀行融資など他の資金調達手段を検討すると良いでしょう。
まとめ
二社間ファクタリングには、「最短で即日資金調達が可能」「償還請求権がない」「取引先に知られずに利用できる」「自社の信用力が低くても利用可能」など、多くのメリットがあります。
取引先からの承諾を得るのが難しい場合や、迅速な資金調達が必要な場合は、二社間ファクタリングの利用を検討してみてください。